(一社)日本冷凍食品協会が運営している、協会会員の製造工場に対する「冷凍食品認定制度」の概要は、以下の通りです。
1.認定制度の経緯
一般社団法人日本冷凍食品協会(以下、協会)は昭和44年に発足しましたが、その翌年には「冷凍食品の品質・衛生指導要綱」「確認工場認定」という形で冷凍食品の認定制度がスタートしました。
この認定制度はその後数度にわたって部分改定を実施し、「HACCP的基準の追加」、「海外工場認定」等を導入しましたが、制度発足当時には重要であった施設(ハード)中心の指導基準がそのまま継続されたため、管理・運営基準(ソフト)が十分ではなくなってきました。また協会会員が外部から受ける各種監査に際しても、当時の認定制度・基準は冷凍食品の品質保証レベル評価のためのスタンダードとして必ずしも通用しているとはいえなくなりました。旧来の「冷凍食品の品質・衛生についての自主的指導基準」ならびに「確認工場制度」が果たした役割は非常に大きいものでしたが、消費者、顧客、社会が要求する経営理念重視の品質保証システムが求められている中、HACCPあるいはISO9000・22000シリーズ等に基づくより高度な品質管理体制を備えた認証システムが不可欠となってきました。
そのため、社会が期待する食の安全・品質のレベルを達成することを目標として、平成21年4月に制度と基準を大きく改定しました。制度としては、第三者認証による合否認定と有効期間の設定の仕組みを加えた要綱・要領を策定しました。また、従来の施設設備に重点を置いた基準に加え、HACCPやISO9000を取り入れた品質・衛生管理体制の確立、コンプライアンス体制の構築等を含む基準に一新し、現在の「冷凍食品認定制度」(以下、認定制度という。)に至っています。
その後、平成21年度以降に改正された法令等への対応や社会情勢の変化、認定制度の運営上の問題点への対応のため、適宜認定要領を改定してきました。認定制度により工場の品質・衛生管理水準は向上し、その基本的な考え方は現在の社会的要請にも適合しており、今でも制度は有効に機能しています。しかし、基準についてはHACCPであることが明確でない、ISO22000等の国際規格への対応が十分でない、食品防御や危機管理に関する内容がない等の課題が明らかになってきました。そのため、将来に向けて社会的な要請が高まることが見込まれるものも含めて、新たな要求事項として付加し、構成も変更して基準を改定しました。この基準は平成29年4月より施行することとしました。
2.認定制度の特徴
- 冷凍食品の品質及び衛生管理の向上に関する継続的な指導を行うための制度です。
- 認定制度は、「冷凍食品認定制度要綱」(以下、要綱という。)、「冷凍食品製造工場認定要領」(以下、要領という。)、「冷凍食品製造工場認定基準」(以下、認定基準という。)をはじめ、その内容を全て公開しています。
- 認定は第三者認証で行われます。
- 認定には有効期間を設け、継続認定には更新審査が行われます。
- 認定の有効期間は標準で4年間ですが、工場のレベルにより不合格又は短縮した有効期間(2年若しくは3年)となります。
- 工場の品質及び衛生の自主的な改善を支援するため、定期的な工場検査に加え、技術的な講習会を行う等の指導を行います。
- 認定を受けた工場で製造する冷凍食品には認定証マークを貼付することができます。
3.認定基準の特徴
- 品質・衛生管理体制の構築と維持向上のため、工場における基準・規程の作成と文書化に関する基準、運用の記録と保管及び改善活動の基準、設備・機器の管理に関する基準から構成されています。
- 品質管理部門の独立、微生物検査室の設置、凍結条件については基本要件(基準の上位概念)として重要視しています。
- 社会から要求される企業姿勢として、CSRの考え方を取り入れています。
- 国際標準であるCODEXのHACCP7原則に則っています。
- ISO22000(FSSC22000)に対応した要求事項となっています。
- 食品防御、危機管理に関する内容も含まれています。
4.冊子「冷凍食品認定制度」の構成
冊子「冷凍食品認定制度」(以下、白本という。)は、制度の目的、運営・手続き等に関する規程である要綱、要領を第1編「冷凍食品認定制度」とし、制度運用の細則として「冷凍食品の認定制度規定の運用」(以下、運用という。)を収載しています。
認定工場への要求事項としては、第2編「冷凍食品製造工場認定基準」及び第3編「食品防御ガイドライン」を収載しています。認定基準は、ソフトに関する基準として「I 仕事の仕組みに係る基準」と「II 現場での実施・管理に係る基準」、ハードに関する基準として「III 施設設備・機械器具に係る基準」の3つの基準より構成されています。
Ⅰ. 仕事の仕組みに係る基準 |
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Ⅱ. 現場での実施・管理に係る基準 |
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Ⅲ. 施設設備・機械器具に係る基準 |
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また、認定基準に関する参考資料として、技術的事項の実施要領やコーデックス委員会の資料を収載しています。なお、従来の白本に含まれていた第3編「冷凍食品の品質基準」、第4編「冷凍食品の表示基準及び表示形式」、第5編「冷凍食品の衛生基準及び試験方法」は、認定基準を達成するための具体的なマニュアルである冊子“冷凍食品認定制度における品質管理の手引き及び基準”に収載しました。
5.冊子「品質管理の手引き」の構成
本冊子は、認定基準の要求事項を実施するための参考書(以下、青本)という位置付けになり、総論、実務、基準の3編で構成しています。なお、青本は平成29年度に改定した認定基準に対応した内容です。
第1編 総論 |
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第1章 冷凍食品について
第2章 品質管理組織および管理体制 第3章 食品関連法規 第4章 冷凍食品の表示基準 第5章 HACCPと国際規格(標準)について 第6章 冷凍食品製造における危機管理の考え方 |
第2編 実務 |
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第 1章 原材料の管理
第 2章 従業員の衛生管理 第 3章 施設・設備について 第 4章 サニテーション 第 5章 異物混入対策 第 6章 防虫・防そ対策 第 7章 工場における小集団活動 第 8章 工場における労働衛生管理 第 9章 製造工程管理 第10章 製品の管理 第11章 トレーサビリティ管理 第12章 クレーム対応 第13章 環境保全への対応 第14章 食品防御及び危機管理体制の構築 |
第3編 基準 |
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はじめに
第1章 冷凍食品の衛生検査と衛生検査基準 第2章 冷凍食品の品質検査と品質検査基準 食品表示法の制定と改定について 第3章 冷凍食品の表示基準及び表示様式 参考資料 |
6.認定までの流れ
(1)入会
認定制度で認定される工場は、協会会員の冷凍食品製造工場が対象となりますので、冷凍食品製造認定工場(以下、認定工場という。)となるためには、まず協会の会員になる必要があります。入会手続きは、協会の総務企画部(Tel:03-3541-3003)までお問合せ下さい。
(2)申請
製造工場より、冷凍食品製造工場認定申請書(以下、申請書という。)及び資料を各1部、協会の品質・技術部へ送付頂きます。申請書は様式1.1~1.9(海外工場の場合は様式2も必要です)を使用しますが、具体的な記入方法や例等は協会HPの冷凍食品の認定制度「申請方法」をご覧下さい。
(3)書類審査(事前審査)
申請書及び資料は協会で内容確認を行い、不備な場合は申請した工場へ連絡して修正や追加をお願いすることがあります。また、基本要件が満たされていないことが明らかな場合は、申請を却下することがあります。
(4)本審査の手続き
申請が認められたら、審査費用を請求します。審査費用については要領別記2を参照して下さい。現地調査迄には入金を完了していただきます。
(5)現地調査
一般財団法人日本食品検査(以下、JFICという。旧「日本冷凍食品検査協会」)の担当
する地域の検査所より調査員が2人出向き、申請に基づいて現地調査を行います。事前に検査所より調査日の日程確認をするとともに、調査で確認する文書・記録のリストを送付しますので、その内容に従って資料をご準備下さい。なお協会HPには「認定基準に基づいた調査票」(以下、チェックリストという。)が掲示されています。これは認定基準要求事項を調査用に具体的にしたものです。工場でも事前に確認して下さい。
調査は2日(海外工場では3日以上)かかります。基準要求事項に基づいて工場の食品安全に対する体制・管理運用状況等を調査し、チェックリストの調査項目毎に評価を行います。
(6)審査(冷凍食品製造工場認定委員会(以下、認定委員会という。))
調査員が確認・評価した内容は、「冷凍食品認定制度 冷凍食品製造工場 認定調査報告書」(以下、報告書という。)としてまとめ、協会に報告書が提出されます。協会の品質・技術部が事務局となり報告書が確認されます。報告書で不明な点があれば、事務局より直接工場に問い合わせ、追加資料を要求する場合があります。認定委員会では報告書等の内容について審査を行い、工場が認定基準に適合するか否かを判定し、適合の場合はその有効期間(2~4年)を査定します。詳細は協会HPの冷凍食品の認定制度「審査」をご覧下さい。
(7)通知
認定委員会による審査結果は、事務局により申請工場へ通知が行われます。不適合の場合は不合格通知と報告書を、適合の場合は認定の有効期間が明記された合格通知と報告書に加え、認定証マークの清刷及び認定工場証(下記)を送付します。なお事務局より、認定委員会で指摘された内容についての補足資料が加わることがあります。
認定工場証見本 画像をクリックすると拡大します。 |
認定証マーク このマークは、日本冷凍食品協会の |
7.認定後
(1)定期検査・工場指導
認定された後は定期検査が行われ、認定調査時に不備又は不適合であった内容について改善状況が確認されます。有効期間が2年又は3年の場合は、定期検査に加え工場指導が行われます。詳細は協会HPの冷凍食品の認定制度「定期検査・工場指導」をご覧下さい。
(2)更新認定
通知された有効期間以降も認定を継続したい場合は、認定時と同様に書類審査(様式8、9、1.4、1.5)と現地調査による更新審査を受ける必要があります。
更新審査の手続きについては、有効期間が満了を迎える対象工場に対して申請書の提出時期等について協会より連絡すると共に、協会のホームページ「会員・業界関係者向け」→「会員・業界関係者向け トピックス一覧」等にも情報を掲載します。詳細は協会HPの冷凍食品の認定制度「申請方法」をご覧下さい。